REMが、暗い顔をして、教室の窓から外を見ていた。余りに珍しいので、女子ばかりでなく、男子生徒まで、REMを見ながら、ひそひそと何やら話をしている。 京子ちゃん……どこに連れて行かれたんだ…… 先程から、そればかり考えている。やっと、記憶を取り戻したのに。やっと、自分の使命を思い出したのに。のっけからこんなヘマをしでかすなんて。 くそっ! あいつにだって言われてたのに! 唇を噛み、やり場のない怒りを必死で堪える。己の立場も忘れて、呑気に、思い出にひたってたばかりに!……彼は、京子の鞄から外したマスコットを愛おしそうに見つめた。 (必ず、必ず見つけ出すからな! それまで頑張って、耐えてくれ……) 祈るような視線。だが、現状は余りにも絶望的に思えた。次元内をスキャンしても京子の居場所がわからない以上、無数にある次元世界をひとつひとつ訪ねて、スキャンしなくてはならない。どれくらいかかるか、想像もつかなかった。それに、彼には本来の使命がある…… 「おはよう!」 その時、突然聞こえた快活な声に、REMは、己の耳を疑った。馬鹿な! 慌てて教室の入口を振り返る。 「きょ、京子ちゃん!」 「おはよう! REM君!」 驚きの余り、それ以上言葉が出てこない。じゃあ、昨日のアレは、何だったんだ? 「何なの? じろじろ見たりして? 私の顔に、何かついてる?」 「きょ、京子ちゃんだよね」 「当たり前じゃない! 変なREM君!」 明るい笑い声。確かに聞き覚えがある。だが、そんなはずは……REMは、慎重に彼女をスキャンし始めた。 「REM君?」 間違いない。正真正銘、桜木 京子だ。 「あ、ああ。ごめん、ごめん」 「ははあ。さては、私があんまり可愛いんで、見とれてたな!」 威勢良く笑う京子につられ、REMが力なく笑う。 「は……はは。ちょっと疲れてるのかな」 「何よ。だらしないわねえ。一つ、もんであげようか?」 「え、遠慮します!」 空手の段位を持つ京子に「もんで」もらったら、足腰が立たなくなってしまう。一度酔狂でつきあって、酷い目に遭った事がある。 「あ、京子! おはよう!」 「おはよう!」 「ねえねえ、昨日のあれ、見たぁ?……」 半ば放心状態のREMを放って、京子は自分の席に座り、友人とお喋りを始めた。 それじゃあ……それじゃあ、昨日聞こえたあの声は? 覚醒後の能力で捉えた思考波を読み違える事などありえない。彼のスキャンで捉えられない、生体アストラルパターンなど存在しない。 俺の勘違いなんかであるものか! しかし、京子はいつも通りやってきて、いつもと変わらぬ素振りを見せている。信じがたいが、目の前の事実は受け入れざるを得ない。REMは、得体の知れない不安を胸のうちに感じ、ますます暗い表情になった。 「来てないな」 「そう……ね……」 あれから、学校に行くかどうか散々揉めたのだが、珍しくも友美が、絶対に行くべきだと強硬に主張したので、結局、いずみが折れ、遅刻ギリギリで学校に滑り込んだところだった。 「芳樹の野郎もいないな」 「ええ……」 遅刻常習犯の龍之介が、既に来ているというのに、西御寺と洋子、おまけに芳樹まで姿が見えない。 「油断はできないな。こないだも、突然現れたんだから」 「ええ……」 「友美?」 「……え? なに?」 「なんか、元気がないぞ。あいつらがいないってことは、ひとまず安心だってことなんだから、もっと明るい顔をしろよ」 「うん……」 「?」 いずみが、どうもおかしいといった表情で友美の顔を覗き込む。 「ご、ごめんなさい。気にしすぎよね」 「そうだよ。油断大敵とは言うけど、そんな暗い顔してても仕方ないぜ」 「そうね。ほんとにごめんなさい」 友美は、慌ててそう言うと、唯に視線を向けた。唯も暗い顔をしている。そうね……きっと、彼女も思い出したのね。あの悲しい別れを……友美も、そのいきさつはよく憶えていた。とても声をかけられない。だが、何も知らないいずみは、唯に近寄って肩を叩く。 「あ、いずみちゃん」 「唯、放課後空いてるか?」 「うん……空いてるよ」 「じゃ、ちょっと話があるんだ。付き合えよ」 「いいよ……」 「?」 「なに?……」 「唯も元気がないんだな」 「そう?……」 「ああ」 「……色々あったから……」 「そうだな。暗くならない、私の方がおかしいのかな?」 そこでいずみは、声を上げて笑ったが、唯はまた暗い顔をして、俯いてしまった。 「ははは……は……」 いずみの笑い声が、萎むように消えていく。 (何か二人とも変だな。あんなことがあったとは言え、どうも雰囲気がおかしいぞ) 何となく、吹っ切れないものを感じたが、丁度本鈴がなり、片桐先生が教室に入ってきたので、それ以上追求する事も出来ず、いずみは席に座った。 保健室で手当てしてもらってたら、すっかり遅くなっちゃった。入学式の後、慌てて立ち上がろうとして、転んで怪我をしたコズエは、教室に向かって走っていた。そして階段を上がろうと廊下を曲がった途端、誰かにぶつかって、また転んだ。 「きゃ!」 「うわっ!」 もう。怪我をしたり、誰かにぶつかったり、ホント、私っておっちょこちょいなんだから。 「すみませ〜ん。大丈夫ですかぁ?」 腰をさすりながら、立ち上がったコズエは、相手に声をかける。 「てて……大丈夫、大丈夫」 相手も、思いきり転んだと見え、足をさすりながら立ち上がった。 「ホントにごめんなさい。こずえが走ってたりしたから……」 「いや、俺は大丈夫だから。それより、怪我はない?」 「はい。大丈夫で……!」 その時、コズエは、はっとした。センサーが反応してる! コズエは大きく目を見開いて、相手の男の子を見つめた。 「そりゃ良かった。ところでさ、君、名前なんて言うのかな?」 凄い! こんなに反応してる……間違いない! 「あの、君?」 じゃあ、じゃあこの人が、あの…… 「もしもし?」 「あ、はい!」 「名前は?」 「あ……こずえです。都築 こずえです!」 「新入生?」 「はい!」 「俺は、龍之介。3年生だ。よろしくな」 「はい! 宜しくお願いします! 龍之介先輩!」 信じられない! こんな偶然が本当にあるなんて! こっちに来て、1週間も経たないうちに、『ソルジャー』が、それも、こんなところで見つかるなんて! 「じゃ、お近付きの印に、今度、デートでもしようか?」 「は?」 「デートだよ、デート。いつがいい?」 「え?」 デートって何? 「明後日の日曜なんか、どうかな?」 「は、はあ……」 この人が、本当に、あの『ソルジャー』? 何か、軽そうな感じだけど…… 「じゃ、決まりだね。八十八駅で11時に待ってるからね」 「あ、あの」 「駄目、駄目。もう約束したからね」 「そうじゃなくて……」 「じゃあね! 日曜日に!」 「あの……デートって……」 言うだけ言うと、龍之介は走っていってしまった。 「何ですか……」 あっと言う間に龍之介の姿は見えなくなる。それに伴い、センサーの反応が弱まり、やがて消えた。 「3年の龍之介って言ってたけど……」 念のために、出来るだけ確かめる必要がある。けど、さっきの反応の強さは……絶対に間違いない。 (コズエって、実は、凄いのかも知んない!) ひょっとして、アミア・フロイラインみたいになれるかも! そんなことを考えながら、コズエは龍之介が走っていった方をずっと見ていた。 帝都テレビのスタジオで、ミュージックショーの収録が行われている。可憐が、丁度歌いおわったところだ。 「舞島 可憐ちゃんでした!」 司会者の声を合図に、可憐は深々と頭を下げ、観客の拍手を受けながら、ステージを降りた。 「可憐ちゃん、よかったよ」 ディレクターが声をかける。 「ありがとうございます」 「どうしたの? 何か元気がなさそうだけど」 「いえ、何でもないんです」 可憐は、力なく笑うと、ディレクターを後に残して、控え室へ向かった。 「あの、可憐ちゃん?……」 彼は、呆気にとられていたが、しばらくして、ひかりに声をかけた。 「ちょっと、ひかりさん」 可憐のマネージャーは、プロデューサーと何やら熱心に話し込んでいて、聞こえないのか、返事もしない。それを見て、仕様がないといったように肩をすくめた。 「やれやれ。ありゃ、働きすぎだよ。可憐ちゃん、体壊さなきゃいいけど」 可憐にしてみれば、的外れの感想だったが。 一方、その可憐は、びくびくしながら廊下を歩いていた。 「まさか……ここまで追っかけてはこないわよね……」 先程から誰ともすれ違わない。何だか薄ら寒くなった彼女は、歩調を速めて控え室に急ぐ。廊下を左に入ったら、すぐ控え室だわ。そこまで行けば、少しは安心できる。根拠などなかったが、そうでも思わないと、怖くて足がすくんでしまいそうだった。 「ふふふふ……」 可憐の肩がぎくっと震える。そ、空耳よ。きっとそうよ。ほら、そこを曲がれば…… 「ふふふ……お待ちしてたわ」 可憐は、顔から音を立てて血の気が引いていくような気がした。控え室の前に、くるみが立っている。 「あら。そんなに怯えた顔をしなくてもいいのよ」 くるみがクスクス笑いながら、可憐に話しかける。可憐の足が、がくがくと震えている。ど、どこから入ってきたの、この人。ここは、関係者以外、ガードマンが絶対に入れないのに。 「ガードマン? ふふふ。入り口にいるだけじゃ、私が入ったのに気づくはずはないわ」 わた、私、何も喋ってないのに、この人、どうしてわかるの。 「ふふ。どうしてかしら」 くるみの目が冷たく光る。ゆっくりと腕を上げる。何か黒いものが、ぱちぱちと音を立てて、指先に踊っている。 「でも、そんなこと、知らなくていいわ。だって……」 冷たい笑いが、くるみの顔に浮かぶ。 「あなた、死ぬんですもの」 「い……嫌……いやぁぁあああああ!!!」 「ふふ。やっと喋ったのね。でも、誰にも聞こえなくてよ」 周囲の光景が何だか変だ。色が暗いような、滲んでいるような。 「もう、私の作った結界の中に入ってるから。ふふふ……」 もう駄目だ……。可憐はへなへなと座り込んでしまった。私は殺されてしまう…… 「諦めがいいのね。あなたらしくないわ……でも、もうそれもどうでもいいことだけど」 闇がくるみの手に集まり、一瞬で形を変え、槍のような形になる。時折、黒い閃光が走っている。 「目覚めたあなたとお手合わせしたかったんだけど、あの方が急いでおられるから」 目覚め? 完全に麻痺してしまったかと思えた思考が、その言葉だけは受け入れた。だが、全身がガタガタと震えて、聞き返す事などできない。 「じゃ、さようなら……」 闇の槍が、くるみの手を離れ、可憐に向かって飛ぶ。死ぬ! 可憐は目を閉じた。 ギィィィィン!! 金属が激しくぶつかるような音。 「な、何?!」 驚いたようなくるみの声がする。恐る恐る目を開けた可憐は、信じられない光景を目にした。闇の槍が、可憐の目の前で空中に静止している。真っ白な閃光と真っ黒な閃光が絡み合うようにほとばしっている。 助かったの?……可憐は呆然としている。 「馬鹿な! 結界の中なのに!」 くるみにも信じられないことのようだ。辺りを見回すが、誰もいない。 「まさか……目覚めたのか?!」 恐ろしい目で、可憐を睨み付ける。もちろん、可憐には訳がわからない。 「何者だ!」 闇の底から沸くような声で怒鳴るくるみ。その瞬間、光の槍がくるみに向かって飛んできた。咄嗟に横に飛び、それを避けたくるみが、素早く辺りの様子を伺う。 「………くそっ!」 再び、光の槍がくるみに襲いかかる。今度はよけきれなかったようで、肩がぱっくりと割れ、血が吹き出した。 「お、おのれ!………」 だが、やはり結界の中には誰もいない。 「く………命拾いしたわね。ここままじゃ、私の方が危ないから、また機会を作る事にするわ」 肩から血が流れ出すのにも構わず、ちらっと冷たい笑いを見せると、くるみの姿が忽然と消えた。 助かった?……本当に助かったの?…… まだ体の震えが止まらない。一体、何が…… 「行ったようだね」 可憐が驚いて振り返ると、いつの間にか、淳が立っていた。 「あなたは……」 「やあ、これで2度目だね、可憐ちゃん」 「またあなたが、助けてくれたんですか?……」 「俺が姿を見せると、今度は戦いになるから、手間のかかることをしちゃったけど、そのせいで、怖い思いをさせちゃったね」 淳が、穏やかに笑う。ぼんやりとそれを見ていた可憐が、突然、がっくりと倒れた。 「可憐ちゃん!」 慌てて淳が駆け寄って、抱き起こす。どこにも怪我はない。安心して気が緩んだからだろう。彼は、可憐を抱き上げると、控え室の扉を開け、ソファにそっと降ろした。 『エミュイエル!』 テレパシーで呼びかける。返事の代わりに、本人がテレポートしてきた。まぎれもなくREMの姿をしている。だが、淳を見る目は、この前とは打って変わって、穏やかなものになっていた。 「良かったよ。覚醒してくれてて」 「ご迷惑をおかけしましたね」 柔らかく笑うREM。 「気にしてないよ。毎度のお約束みたいなもんだからね」 「すみません」 「良いって、良いって。それより、《闇》の攻撃が本格化し始めたんだ。もう一刻の猶予もならない。レディ・ガーディアンをすぐにでも、全員覚醒させたい」 「やはり、あなたが封印してたのですか」 淳は、ゆっくりと頷いた。 「だが、少しヘマをした。一人ずつ順番に覚醒させなくちゃならなくてね」 「あなたらしくないですね」 「はは……そうでもない。ヘマばかりだよ」 「御謙遜を……」 「まあ、それはともかく、それまでに彼らに命を奪われるようなことがあってはならないんだ。協力してくれ」 「もちろんです。本来これは、私たちだけでやらなくてはならないことなんですから」 「それは……」 「いえ、バランスを維持できなかった私たちが悪いんです」 「そんな風に言うものじゃない。それより、場所を変えないか?」 「またどうして?」 「いつ可憐ちゃんが目を覚ますか、わからないからさ」 「ああ……」 「取り敢えず、この部屋の周囲に結界を張っておく。それに場所を変えると言っても」 淳は、上を指さした。 「すぐ近くだからね」 「わかりました」 REMがテレポートして姿を消した。淳は、くるみの張った結界を破壊すると、改めて自分の結界をしかけ、ジョウントした。 「一体二人とも、どうしたんだよ」 友美と唯を白蛇ヶ池公園に引っ張っていったいずみが、開口一番にそう言った。 「そりゃ、怖いのはわかるけど、黙って手をこまねいてるなんて、できないだろう?」 「うん……」 友美が力なく答える。唯は、口を閉ざしたままだ。 「あれから、何かあったのか?」 「そんなはずないじゃない。昨日から一緒でしょ」 「だけど、昨日はあんなに、一生懸命だったのに、今日は打って変わったように、あのことを話すのを避けようとするじゃないか」 「それは……」 「なあ、何かわかったんなら、黙ってないで、私にも教えてくれよ。危ない目に遭ったのは、私も一緒なんだぜ」 「………」 まだいずみには言えない。友美は、俯いて、唇を噛み締めた。 「唯はどうだったんだ?」 「え?」 「え、じゃなくて、何かあったんじゃないのか?」 「ど、どうして? 唯だって何もなかったよ」 「でも、おかしいぜ。まるで、何か隠し事をしてるみたいだぜ」 はっきりとわかるくらい、唯は動揺した。 「やっぱりそうなんだな」 いずみの声に苛立ちが混じり始める。 「二人とも、何を隠してるんだよ。何で私には言えないんだ!」 「ち、違うわ、いずみちゃん」 「じゃあ、言ってくれよ!」 「それは……」 「私が信用できないのか!?」 「そんじゃないの」 「じゃあ、なんでなんだよ!」 「………」 「唯!」 「う、うん……」 「唯はどうなんだ。唯も教えちゃくれないのか!?」 「………」 「何とか、言ってくれよ!」 「いずみちゃん……」 唯が何か言いかけようとするのを、友美が目配せして止めさせる。 「友美!」 「ごめんね、いずみちゃん。でも、まだ言えないの」 「まだって……どういうことなんだ!」 「いずれ話せるわ……いずみちゃんが思い出したら……」 「思い出す?……おい、友美。一体、何の話をしてるんだ? 私は、昨日のことを言ってるんだぞ」 「そうね……そのことよ……」 「もう! いらいらするなあ!」 その時、冷ややかな声が3人に浴びせかけられた。 「そう、かっかすると、体に悪いぜ」 誰だ!? 3人が、一斉に声のした方を振り向く。 「洋子!」 友美と唯の顔に緊張が走る。 「何か用なのか?」 「ああ」 「じゅあ、さっさとすませてくれ。今、取り込み中なんだ」 「言われなくても、さっさとすませるよ」 洋子の指先から闇が伸び、3人に向かって飛んだ。友美と唯は、素早くかわしたが、いずみは間に合わなかった。腕に深々と刺さった闇が、ばちばちと音を立てながら、更に腕に食い込んでいく。血が激しく流れ出る。 「洋子!……手前!……」 これは、刃物じゃない。自分から食い込んでくるナイフなんかあるものか……ぎりぎりと肉に食い込み、激しい痛みがいずみを襲う。 「いずみちゃん!」 唯が慌てて駆け寄る。 「唯ちゃん! いずみちゃんをお願い!」 友美はそう叫ぶと、洋子に向かってジャンプした。同時にその体が光に包まれ、制服が、バトルスーツに変わる。 「と、友美!?」 それを見ていたいずみが、驚きの声を上げる。だが、続いて唯の体にも同様にバトルスーツが装着された時には、言葉を失っていた。 「はん! もう覚醒してたか!」 それには答えず、友美の握り締めた拳から光が伸び、剣となる。 「たぁぁああああ!!!」 洋子に向かって、光の剣が振り降ろされる。同時に、洋子の腕に楯状のバリアが生じて、それを受け止める。激しく閃光がほとばしり、バリアに食い込んでいく光の剣。だが、洋子の腕を落とすまでには至らなかった。 「くっ……防御には秀でていても、攻撃力は今一つだったが、今もそれは変わってない ようだな」 洋子がバリアの下から、不敵な笑みを見せる。 「だが、私は違うぜ!」 素早く上げた指の先から、闇が連射される。転がりざまによけながら、攻撃のチャン スを伺う友美。 「遅い!」 闇のサーベルが洋子の手から伸び、友美に向かって放たれた。テレポートして避け、お返しに光の剣を投げかえす。だが、易々とそれを交わした洋子は、再び闇のサーベルを放つ。と同時にテレポートした。友美は、サーベルをかわしきれず、腕が裂ける。 「ぐ!……」 続けざまに、洋子が友美の背後に現れた。両腕を友美の首にかけ、ぎりぎりと絞め上げる。 「がは!………」 友美は、必死で腕をほどこうとするが、がっちりと食い込んで、外れない。 「友美!」 いずみが、悲痛な叫び声を上げた。 |