|
明くる日。やっぱり唯と友美は欠席だった。どういうわけか、龍之介も休んでる。 「あきら」 「ん?」 「りゅ、龍之介はどうしたんだ?」 「え? 龍之介が、ど、どうかしたか?」 「いや、今日は、その、来てないからさ……」 「あ、ああ! そ、そうなんだよな! 珍しいだろ! なははは」 …………? なんか、目一杯動揺してるような…… 「なんかあったのか?」 「え? い、いや、何もないぜ。うん。いずみが気にするようなことは何もない」 「私が気にしないようなことならあるのか?」 「う…………」 「おい、あきら」 「な、なにかなぁ?」 「なんか隠してるな」 「べ、別に隠してる訳じゃ……」 「じゃあ、なんだよ」 「いや、あのな、その……」 「なんだよ。はっきり言えよ」 「なんと言うか、まあ……」 どげし! 「っっっっぁ!!」 「い?」 いつの間にそばに近寄ってたのか、洋子がいきなし右ストレートをあきらの顔面に決めた。 「おい、あきら。余計なこと言うんじゃねえよ」 「☆△◇♂∞★◎▼!!」 「……やっぱり、なんかあるんだな」 「いずみの気にするこっちゃねえさ。それよりあきら、行くぜ」 「いてて………行くって?」 「馬鹿野郎! もう忘れたのかよ!」 「?…………あ、あぁ! そ、そうだったな。いずみ、悪いけど、俺行くわ」 「行くって…………おい、あきらも洋子も待てよ」 「じゃ、じゃあな」 「おい、あきら! 洋子!」 「悪いな、いずみ。まだ言えねえんだ」 「洋子?……」 「じゃな」 「あ!…………」 二人ともそそくさと教室を出ていった…………私…… 「いずみさん。どうかなさったのですか?」 げげ! 虫酸の走る、この声は!…… 「あんなアホのことを心配する必要はありません。それより……」 ばぐっ! 「はう!………………」 決まった……会心の左アッパーだ……ふん! 龍之介のことをアホだなんて言うからだ。ば〜か。 それにしても、何があったんだ?………龍之介ぇ…… 「帰った?」 「ええ。授業が終わるとすぐ」 「そう…………ありがとう」 放課後、あきらと洋子は速攻でいなくなってしまった。龍之介のことが気になった私は、香織に調べてもらおうと思ったんだけど…………香織までいない…… 「春奈ですか? 今日は部活を休むって言ってましたけど」 「休み?」 「はい」 ひょっとしたらと思って、弓道場に来てみたら、春奈もいない。 一体、みんなで何を始めたんだ? 「出ない…………」 夜、龍之介に電話したけど、何度コールしても出ない。共用の方にかけたら、誰か出るんだろうけど、もし美佐子さんじゃなくて唯が出たら………そう思うと、怖くてできなかった。 「龍之介の……馬鹿……」 龍之介の声が聞きたい。たった1日なのに、会えないのがこんなに辛い。 友美たちは……友美や唯もこんな気分なんだろうか? 私が龍之介をとっちゃったから……毎日こんな気持ち?………… 何考えてるんだろ。私ってやっぱり傲慢な女なんだ。 涙が止まらないのに、声が出ないっていうのが、どんなものなのか。私はその夜、初めて知った。 次の日。なんだか、朝から胃が痛い。お母様がしきりに顔色が良くないって言ってたけど、そうなんだろうか? まあ、確かに気分は最低だけど……… 階段を昇るのが妙に億劫で、教室のドアがなんだか重くて…… 「おはよう、いずみちゃん」 た! た、た、た!………… 「いずみちゃん…………?」 友美…………顔色が少し良くないけど、前と変わらず、優しく微笑む友美がいた。 「お、お、おはよう」 鳩尾のあたりがきゅうっと締め付けられる。 「も、もう大丈夫なのか?」 「うん。ごめんね、心配掛けて」 「い、いや……私こそ、見舞いにも行かなくて、ごめんな……」 「ううん、いいのよ」 ふと会話が途切れた。友美はじっと私を見ている。何か話さなくちゃ。何か…………そればっかり頭の中でぐるぐると回り、なかなか言葉が出てこない。それでも何かをと考え続け、やっと出てきた言葉は思い切り間抜けだった。 「あの、友美、私………ご、ごめ……」 「ストップ」 友美の人差し指が私の唇に当たる。友美の顔が、一瞬だけ悲しげに歪んだけど、またすぐに元のような微笑が浮かぶ。 「いずみちゃん。それって随分よ」 「え……あ………」 「そんなことは言わないで。ね?」 「う、うん…………」 「だって、私たち、親友でしょ?」 ほんの少し……ほんの少しだけ、絶句した。そうだよ。なのに、私は友美を裏切ったんだ。親友なのに。 「それとも………もう、違うの……かな……?」 涙が……嗚咽が漏れた。 「い、いずみちゃん?」 もうこらえきれなくて。私はその場にしゃがみこんで、泣き出してしまった。何も言えない。何も言えない。私はこんなに優しい人を裏切ってしまったんだ。一杯言いたいことがあるはずなのに、それを全部飲み込んで、それでも親友だと言ってくれる、こんな優しい人を裏切っちゃったんだ。 「いずみちゃん……」 友美の腕が私を包む。友美も温かかった。とても温かかった。 私は……どうすればいい? 友美はああ言ってくれた。龍之介はそれを見て、ほっとしたように肩をすくめたけど、私は、だからと言って、全てを水に流していいような気がしなかった。第一…………唯はどう思ってるか。 ちゃんと唯も来てた。でも唯は、授業中も休み時間も自分の席に俯いて座り込んだままだった。西御寺が声をかかけても返事をしない。それどころか、いつも仲良くしてる女の子が心配して話しかけても俯いたまま生返事をしてるようだった。 いつか唯に聞いたことがある。好きな人と結婚して、どういう家庭を作りたいか。頬を染めながら、うっとりとした視線で、熱心に話していた唯。看護婦になることと同じか、ひょっとしたら、それ以上に大切だった夢。 「で、誰とそんな家庭を作るんだ?」 何も考えずにそんな意地悪な質問をしたっけ。 「…………いずみちゃんには……言えないよ……」 聞こえるか聞こえないかというくらいの小さな声で寂しそうに呟いた唯。聞こえないふりをしたけど、その日の夜、ベッドの中で私は泣いたんだった。友美にだってかなわないのに、唯までいたんじゃ………… 教室のざわめきにはっとして顔を上げる。授業は終わっていた。唯は? 友美は? 見回すと、友美が唯を支えながら、二人して教室を出て行くところだった。反射的に立ち上がって後を追う。 唯と友美が腰を下ろしたのは、屋上のベンチだった。私は二人に見つからないよう、出入り口のドアの陰に身を潜めた。唯の話す声がかろうじて聞き取れる。 「わかって…………けど……」 顔を両手で覆い、肩を震わせる唯。 「いずみちゃんのせいじゃないの。いずみちゃんは悪くないの。頭ではわかってるんだよ。でも……でも……駄目なの」 「いずみちゃんの顔を見てたら……見てたら……どうしてって……どうして唯じゃ駄目だったのって……」 「家でもお兄ちゃんの顔を見てるのが辛くて………」 「ごめんね、友美ちゃんだって辛いのに…………」 友美が唯の背中をさすりながら、何か囁いている。唯は、小さく首を振りながらそれに答えていた。 「うん……約束だから……お兄ちゃんといずみちゃんを応援するって約束したから」 「でも今だけ………ごめん………今だけ………」 わかってたことなのに。それを聞いてどうしようと思ってたんだろう。ひどく足が震えて仕方がない。 「ずっと前から知ってた……いずみちゃんがお兄ちゃんのこと、好きなの。でも………いつも喧嘩ばかりしてたから、大丈夫って思ってた………ひどい子だよね、唯って」 「だから罰なの………そんなひどい子が幸せになっちゃいけないもん……」 「わかんない……でも、もう少ししたら大丈夫だと思う……ありがとう、友美ちゃん」 がたがたと体が震える。胸が苦しい。違うんだ。ひどいのは私だよ、唯。だって、私は龍之介の関心を買うために、わざと……… 「本当は自分が悪いの…………いずみちゃんや友美ちゃんのことを気にして、いつかは、いつかはってごまかしてばかりだったから……」 唯……………… 誰かが肩に手を置いた。全身が凍り付く。 「いずみ、もういいだろ?」 龍之介の声。振り返ることも息をつぐこともできない私。龍之介は私を抱えるようにして階段を下り始めた。最後に聞いた唯の言葉が頭の中をこだまする。 『いずみちゃんや友美ちゃんのことを気にして…………』 私は……何を考えてた? 電話が鳴ってる。頭が痛い。お願いだからほっといて。 …………まだ鳴ってる。 …………相手は諦めるつもりがなさそうだ。……仕方ない…… 「もしもし?」 『はぁ……やっと出た』 「龍之介?」 『どうしたんだ? 具合でも悪いのか?』 「う、ううん……そんなんじゃない……」 『本当に大丈夫なんだな?』 「うん……」 『ならいいけどな。それより今度の日曜のことだけど……』 「あ、あのさ……」 『なんだ?』 「…………ごめん、何でもない」 『変な奴だな……まあ、いいや。今度の日曜な』 「うん……」 『八十八駅じゃなくて、如月駅で待ち合わせでもいいか?』 「う……ん……」 『時間も11時でいいか?』 「…………」 『おい、どうしたんだよ?』 「あのさ…………」 『なんだ?』 「し、しばらく、そういうのやめとかないか?」 『そういうのって?』 「その……外で……あの……会ったりとか」 『なんで?』 「……………………」 『…………いずみ』 「なに?」 『気にしすぎだ、お前』 「…………そんなことない」 『友美や唯なら大丈夫だって』 「そんなことない……」 『ちゃんと学校へ来るようになったし、メシだってちゃんと食ってるし』 「龍之介!…………」 『なんだよ』 「そういうことじゃなくて……!」 『じゃあ、どういうことなんだ?』 「…………」 『第一、しばらくっていつまでだ? 唯なんて、ずっと家にいるんだぞ』 「だけど…………」 『そんなの何の解決にもならないだろ』 「でも!…………」 『でも、じゃない』 「…………」 『俺たちが会うのをやめたからって、一体何が良くなるんだ?』 「そ、それは…………」 『あのな、俺だって別に唯や友美が嫌いな訳じゃないんだぜ』 「そ、そんなの……わかってる……」 『いいや、わかってない。いいか?…………』 「…………」 『こら、ちょっと待て!……』 「?」 『………………』 「龍之介?」 『いずみちゃん』 ひっ!…………ゆ、唯…………なんで唯が?………… 『唯、怒るよ』 「ご、ごめん…………」 『どうしてお兄ちゃんと会うの、やめたいの?』 「…………」 『唯が邪魔するから?』 「邪魔だなんて……」 『いずみちゃん、唯のこと、そんな意地悪だと思ってたんだ』 「ち、違う!……」 『いずみちゃん。唯はいずみちゃんのことお友達だと思ってたけど、違うの?』 「……と、友達だよ」 『お兄ちゃんとおつきあいするようになったら、お友達じゃなくなるの?』 「そ!………そんな………」 『唯はずっといずみちゃんとお友達でいたいよ』 「あ、あたし……だって!……」 『じゃあいいじゃない』 「…………」 『いずみちゃんがお兄ちゃんとおつきあいしたって……関係ないでしょ?』 「…………」 『第一、お兄ちゃんなんか……不潔だし、スケベだし、だらしないし……しょ、しょっちゅう心配ばかり……かけるんだから、いずみちゃんが世話してくれたら、唯、助かるもん……』 嘘……嘘……あんなに好きだったくせに……あんなに嬉しそうに龍之介の世話を焼いてたくせに…… 『お、お兄ちゃんなんか……ひっく……』 「唯…………」 『ち、違うよ……ひっく……あ、あんなお兄ちゃんでも……好きになってくれる……人……ひっく……がいて……嬉しい……ひっく……から……なんだから……』 唯の嘘つき……優しい……嘘つき………… 「ごめんなさい……ひっく……ごめんなさい……ひっく……」 『な、何……謝ってるの……ひっく……変な……いずみちゃん……ひっく……』 どれくらいそうやって二人で泣いてたのか……わからない。 『ぐすっ……ごめんね、電話の途中で邪魔しちゃって』 「ひっく……そ、そんなことない……」 『あのね……ぐすっ……友美ちゃんと約束したんだ』 「約束?……ひっく……」 『いずみちゃんは、大事なお友達だから……ぐすっ……二人で応援しようねって……』 「唯…………」 『だから……ぐすっ……ちゃんとお兄ちゃんとおつきあいしないと……ぐすっ……二人でお仕置きしちゃうんだから……』 「ひっく……ありがとう……」 『うふふ……ぐすっ……じゃ、じゃあ、お兄ちゃんに代わるね』 「うん……」 どうして……どうして……こんなに優しい人たちなんだろう…… 『やれやれ』 「……………………」 『それにしても随分だよな。誰が不潔でスケベでだらしないんだ』 「龍之介!」 『じょ、冗談だって。それよりいいな? 如月駅に11時だぞ』 「う、うん…………」 本当に……いいのか………いいのか? 猛烈に胃が痛い。朝、起きるなりトイレで思い切り戻してしまった。戻すものなんかないはずなのに………… 「いずみ、今日は休みなさい」 「……行く」 「でも、そんなに具合が……食事だってもう……」 「行くの!」 心配するお母様を怒鳴りつけたりして………私は何を意地になってるんだろう? でも歩くのも辛い……やっと校門が見えたのに、なんだか、息が切れて……… 「いずみさん、大丈夫ですか?」 げげげ、この鬱陶しさがドップラー効果を起こしたような声は。 「さ、僕がエスコートしますから、保健室に……」 「西御寺……ほんっとお前って懲りない奴だな」 「この間のことですか? いや、いずみさんの気持ちも考えず、失礼しました」 「は?」 「ですが、ご安心下さい。あれから少し調べさせて頂きまして」 「え?」 「だいたいの見当はつきました。龍之介の成敗はお任せ下さい」 「こらこらこら! 一体、何を言ってるんだ!?」 「ふっ…………何も案ずることはありませんよ」 朝っぱらから何かっこつけて訳わからんこと言ってるんだ、こいつ? 「それより、本当に顔色がよろしくありません。さ、保健室に」 「待てよ。何を調べた?」 「ふっ…………」 だから、その無意味にかっこつけるのは、やめろっつうに。 「それをこんなところでぺらぺら喋るほど、僕は無粋な男ではありません」 をい。 「ささ、僕が腕をお取りしますので……」 「いいか、西御寺」 私は西御寺の差し出した手をはたいてやると、ジロリと睨み付け、低〜い声で言ってやった。 「何調べたかわからないけどな、余計なことをするんじゃないぞ」 「ふっ。わかってますよ。いずみさんは何も心配しなくもよろしいんです」 き、聞いてない……思わず目眩がした。 「いけません。さあ、早く……」 「いいから。放って置いてくれ」 全く。何でこんな奴に心配されなくちゃいけないんだ。う〜。余計に気分が悪くなった。最低…… やっとの思いで教室にたどりつき、自分の席にへたりこむ。友美と唯はもう来てた。龍之介はまだ来てない。なんだか、ほっとしたような寂しいような複雑な気分だ。唯がこっちをちらちらと見てるような気がしたけど、なんだか顔があわせにくくて、気がつかないふりをした。やがて、意を決したように唯が立ち上がり、友美と一緒にこっちへ来る。 「いずみちゃん、大丈夫?」 「う、うん……」 ちゃんと顔を上げて返事をしなくちゃと思うのに……でないと変に思われるって、わかってるのに……できなかった。どうしても、唯の顔を、友美の顔を見ることができなかった。 「無理しないで。我慢できなくなったら言ってね」 「うん……」 友美は優しくそう言うと、唯を促して自分の席へ戻っていった。同時に予鈴が鳴り、片桐先生が教室に入ってくる。その後からこっそり入ってくるのは…………龍之介だ。片桐先生は気づいてないのか? 「龍之介君」 「は、はい!」 しっかり気がつかれてる。 「遅刻じゃないのはいいけど、私の後をつけるのはやめてね」 「は、いや、その」 「ナンパと痴漢は違うのよ。いいわね」 「は、はい……」 みんな笑ってる。私も思わず笑ってしまった。そんな私を見て龍之介が睨む。ペロッと舌を出して肩をすくめたら、それを見て龍之介が笑った。私もまた笑う。でも………友美と唯がそんな私を見て微笑んでるのに気がついて、慌てて顔を伏せた。 「さむ…………」 珍しく陽当たりもいいし、風もさして強くないのに、屋上は寒かった。 「ごめんね……」 友美や唯のいないところで言ってみたって、何にもならないのに。それに、そんなこと言ったってどうなるものでもないのに。私って馬鹿だ。 「いずみ?」 肩がぴくっと震える。龍之介だ。なんで? 今頃あきらとお昼を食べてると思ったのに。 「こんなとこで何してんだよ」 「………」 「メシは食ったのか?」 「食欲ないから……」 「ちょっとこっちを向いて見ろ」 「…………」 いきなり肩をつかまれ、振り向かされた。龍之介の顔が険しい。私はぼけっとそれを見つめるばかりだった。 「最後にメシを食ったのはいつだ?」 「え?」 「最後に食事したのはいつだって聞いてるの」 「ゆ、ゆうべ……」 「嘘つけ」 「………………」 「正直に言えよ。いつだ?」 「覚えてない…………」 「馬鹿!!!」 思わず体が竦む。 「なんでそんなに自分を責めるんだ。そんなことしたって誰も喜ばないだろ!?」 「だって…………」 「だってもへちまもあるか! いずみがそんなんで唯が喜ぶか? 友美が喜ぶか?」 「……………………」 「そんなになるんなら……なんで俺の恋人になりたいなんて言ったんだ?」 「……………………」 「もう、やめるか?」 え? 「これ以上いずみを苦しめたくはないからな」 いや……いや…… 「俺だって辛いよ。それならいっそ、なかったことにした方が」 いや……いや!……いや!! 「そうすりゃ、いずみも友美や唯のことを気にしなくてすむだろ?」 「いやだ!!」 どうしようもなく体が震える。龍之介は少し困った顔をしてたけど、指で私の頬を拭うと、そっと抱きしめた。 「わかったから。もうわかったから泣くな」 「自分でも……自分でも……わからないんだ……」 「わかった。もういい」 「どうしたら……どうしたらいい?……どうしたら……」 龍之介と別れたくなんかない。でも友美や唯は………… 「いずみと友美は親友だろ?」 「うん……」 「唯も大事な友達だよな」 「うん……」 「それなら、二人が言うことをちゃんと聞いてあげないといけないよな」 「うん」 「二人ともいずみが俺とつきあうのを認めて、その上で、前と同じように仲のいい友達でいたいって言ってるぞ」 「……………………」 「なら、いずみはそれに応えなきゃいけないだろ?」 「それは……そうだけど……」 「けどなんだ?」 「…………」 「わかったな?」 「……うん……」 「じゃあ、今日は帰れ」 「え?」 「帰って、ちゃんとメシを食って、大人しく寝てろ」 「…………」 「でないと、本当にぶっ倒れちまうぞ」 「うん………」 「よし、いい子だ」 龍之介が私の頭を撫でる。馬鹿野郎、子供扱いするなよ………… |