構想・打鍵:Zeke
この作品はフィクションです。登場する人物、名称、土地、出来事等は実在するものではありません。 また本作は(株)ELFの作品「同級生2」の作品世界を設定として使用しております。 |
くすんくすん、 「唯、もう泣くなよ。ほら、俺がついてるからさ。」 「ぐすっ。ずっと?」 「ああ、ずっと一緒にな。」 「じゃあ、唯はお兄ちゃんのお嫁さんになる。」 「はは‥‥うんと可愛くなったらな。」 「うん‥‥がんばる。」 「あ―――――っ!」 ‥‥って、誰だよ、でっかい声で‥‥げげっ! 友美。なんでこんな所に。 「龍くん! 私をお嫁さんにしてくれるって約束はどうするの?」 約束? そんなのしたか? 「えーと、いつの‥‥」 (話だっけ)という言葉を俺は慌てて飲み込んだ。何となれば友美の表情がちょっと 怖い。 やばい! まさか小学校低学年でこんな修羅場を経験するとは思わなかったぞ。 ‥‥思い出すんだ龍之介。本当にお前は友美をお嫁さんにするようなことを言った のか? 俺はうんうんと3分ほど考えてみたのだが思い出せない。10年後にこんな事やっ たら結婚詐欺罪になるんだろうかと、ふと心配になった。 そうこうしている内に、当面のタイムリミットが来てしまったようだ。 「忘れたって言うのね。」 いや、忘れたって訳じゃないんだけど、思い出せないだけなんだ。 ‥‥もしかしてそれは忘れたって事になるんだろうか? 「そう、あれは幼稚園入園前の春‥‥」 幼稚園入園前? 4年も前の話じゃないか! 「そんな昔のこと、覚えてないよ。」 そんな俺の意見は、友美に完全に無視され、 「つまり4歳の時に私は龍くんにプロポーズされたの。だから唯ちゃんは諦めてね。」 ぷ、プロポーズぅ? そんな無茶苦茶な‥‥俺は4歳の時に既に片足を人生の墓場 に入れていたって言うのか? いや、「結婚は人生の墓場」と言うじゃないか。 「そんなの横暴だよ。友美ちゃん知ってる? 遺書は後から書いた方のが優先される んだよ。」 い、遺書ぉ? 唯までそんな事言うのか。いや、確かに墓場に入る前に遺書は書か にゃならんかもしれないが‥‥。 「でも先に言われたのは私よ。」 「唯は今言われたもん。」 「‥‥。」 「‥‥。」 ‥‥嫌な予感がする。悲しい事にこーゆー時の勘は良く当たるんだ。 「ここはやっぱり‥‥」 「そうだね。‥‥お兄ちゃんにはっきりさせて貰お。」 ちょっと待て。女の子は全人類の半分もいるというのに俺は二者択一か? そんな の納得いかないぞ。 と無言の抵抗をしたのだが、無言ゆえ2人には通じなかったらしい。 ずいっ! と2人の顔がアップになる。 「龍くん!」 「お兄ちゃん!」 「「どっちがいいか、はっきり決めて!」」 頼むから夢ならさっさと醒めてくれ‥‥。
『FU・TA・MA・TA』 了