An Episode in The Known Worlds' Saga ---《 The Soldier 》 外伝


光の真名
ひかりのまな

Intermission 1 《 Starlight Christmas 》

 これは、kuropaさん『しーちゃんのくりすます』にインスパイアされて書いた作品です。そちらを先に読んで頂けましたら、よりお楽しみ頂けるかと存じます。というより、一種のアンサーノベルなもんですから、『しーちゃんのくりすます』をご存知ないと、何のことやらさっぱりわからんでしょう。^^; あ、作中「ともみちゃん」とあるところは、本来別の女の子なんですが、勝手に当てはめてしまったので、そこは読み替えてご覧下さい。^^;;;
 そうそう。『しーちゃんのくりすます』は、kuropaさんのホームページ、つまり『不定期刊くろぱ』の「おはなしの部屋」にあります。


 寒い寒い冬のある夜のことです。八十八町でも道行く人はみんなとっても寒そうに家路を急いでいます。こんなに寒い夜は、早くお家に帰って、暖かいお部屋で暖かいご飯を食べたいね。…………みんな同じことを考えているようです。駅前でサンタの格好をしたお兄さんが何か配っているようですけど、一目散にお家に帰る人ばかりで、なかなか受け取ってもらえません。お兄さんはそばの袋をのぞいてため息をついています。何だかちょっと可哀想ですね。

 おや、どこかで見たようなおじさんが、サンタさんに近寄っていきます。何か聞いてるようです。サンタのお兄さんが一言二言返事をすると、おじさんはお礼を言って、どこかへ歩いていってしまいました。お兄さんは、元のように一生懸命何かを配り始めたようです。

 そういえば、良い子のみんなは何をしてるんでしょうね。もうあったかいお布団にくるまっておやすみしてるでしょうか。そうですね。こんな時間まで起きていては、とても良い子とは言えませんしね。でも、ちょっとのぞいてみましょうか。可愛らしい寝顔を見るだけでも、いいでしょう?



 まず最初は、いずみちゃんのお家です。おや? いずみちゃんのお部屋の窓が開いてますね。こんなに寒い夜なのにどうしたんでしょう? 窓には、小さな女の子の姿が見えますけど…………まあ、いずみちゃんじゃないですか。いずみちゃん、良い子はおねんねの時間ですよ。

「…………しーちゃんは、ほんとうはさんたさんがだいすきですから……」

 椅子の上に正座して、なにやらお祈りをしているようですね。でもいずみちゃん、こんなに寒いのに窓を開けたままだと風邪を引いてしまいますよ。ほらほら、体が震えてるじゃありませんか。

「さんたさんはしーちゃんをきらいにならないでください…………」

 一生懸命にお祈りしています。よほど大事なことなんでしょうか。

「だから、しーちゃんにもぷれぜんとをあげてください…………あ、いずみのぶんもわすれないでください」

 うふふ。ちゃっかりしてますね。でも一体、何があったんでしょうね? あら? いずみちゃんの後ろに人影が…………いずみちゃんは気がついていませんね。じっといずみちゃんを見つめているようですけど…………変ですね。なんだかぼんやり光っているようですし、宙に浮いてるようにも見えますけど…………ひょっとして、いずみちゃんの大嫌いなおばけさん!?

「いずみちゃん」
「…………おねがいです、さんたさん…………」
「いずみちゃん?」

 あ、やっといずみちゃんは気がついたようです。吃驚して大きな声を…………あげませんね。おっきな目をいっぱいに開いてじいっと見てるだけです。

「こんばんは、いずみちゃん」
「…………おにいさん、だぁれ?」

 そういえば、よく見るとその人はまだ若いようです。でもいずみちゃん、そういうことを聞く前に、お家の人を呼ばないと…………

「お兄ちゃんはね、サンタさん」
「サンタさん?」

 いずみちゃんは訝しげにそのお兄さんを見つめます。そうですよ。こんな時間にサンタさんだなんて言ってお部屋に黙って入ってきて、悪い人に決まってます。ほら、いずみちゃん……

「あかいおようふくもきてないし、おひげもないのにさんたさんなの?」

 いずみちゃん、そういう問題ではありません。

「お洋服はお洗濯に出しちゃったし、お髭はうっかりそっちゃったんだ」
「ふぅん」

 い、いずみちゃん、そこで納得してはいけません。

「サンタさんって、あわてんぼなんだね」

 にっこり笑って椅子から降りると、その自称サンタさんに近寄っていきます。ああ、ほら、自称サンタが腕を伸ばして……危ない!

「ほぉら!」
「きゃ!」

 ほっ。どうやら、いずみちゃんを抱き上げただけのようです…………

「まず窓を閉めようね。風邪を引いちゃうといけないから」

 パチンと指を鳴らすと、あらあら、窓がひとりでに閉まってしまいました。いずみちゃんは、目をまんまるにして、吃驚しています。

「さんたさんって、すごぉい」

 いずみちゃんはこの男をすっかりサンタさんだと思ってしまったようです。素直なのも困り者ですね。

「どうしたの? さっきから一生懸命お祈りしてたようだけど」
「あのね、あのね………」

 だっこされながら、いずみちゃんはしーちゃんのことを話し始めました。しーちゃんが幼稚園で、クリスマスなんて嫌いだって言ったこと。プレゼントなんていらないって言ったこと。サンタさんなんて違うって言ったこと。

「サンタさんは違うってどういうことかな?」
「よくわかんない…………」

 急にいずみちゃんの声が小さくなってしまいました。

「しーちゃんは、サンタが嫌いなのかな?」
「ううん! そんなことないもん!」

 おやおや、そんなにむきになって……自称サンタもくすくす笑っています。

「なぁに?」
「いずみちゃんは、しーちゃんが大好きなんだね」

 いずみちゃんは、こっくりと頷きました。けど、どうして急にそんなことをサンタさんが言い出したのか、よくわかりません。

「しーちゃんはくりすますきらいなんだって…………」
「それは困ったなぁ」
「でもね、まえはちがうんだよ。ともみちゃんといっしょに、くりすますのおはなし、いっぱいしたんだもん。ほんとだよ」
「じゃあどうして、嫌いなんて言ったんだろうね」
「うん…………」

 いずみちゃんは俯いてしまいました。聞きたいことがあるんだけど、うまく言い出せない…………そんな様子でもじもじしています。

「どうしたの?」
「…………」
「いずみちゃん?」
「…………あのね……」
「なんだい?」
「…………おこらない?」

 自称サンタは、ちょっと吃驚していずみちゃんを見つめました。でもすぐに優しい目になって、いずみちゃんの頭を撫で、優しく言ったのです。

「いずみちゃんを怒ったりしないよ」
「……しーちゃんも?」
「しーちゃんも怒ったりしないよ。だから言ってごらん」

 それでもしばらくもじもじしてましたけど、やがて決心がついたのか、自称サンタの目を見て、いずみちゃんはこう言ったのです。

「あのね……さんたさん、しーちゃんにいじわるしなかった?」
「へ?」

 さすがの自称サンタも、そんなことを言われるとは思ってなかったようです。一方、いずみちゃんの方は、やっぱり言わなければよかったと、顔を俯かせています。それを見て、自称サンタは、何か思いついたようで、とっても優しい声で、いずみちゃんに話しかけました。

「ひょっとしたら、しーちゃんがいじわるされたって思うようなことをしちゃったのかも知れないね」

 いずみちゃんは、おずおずと自称サンタの顔を見上げます。

「これからしーちゃんのところに行って、ごめんねって謝ってきた方がいいかな?」
「さんたさん、いじわるしたの?」

 自称サンタは、にっこり笑って答えます。

「意地悪なんかしないけど、でも、しーちゃんは意地悪されたと思ってるかも知れないでしょう?」
「どうして?」
「お兄ちゃんは忙しいから、しーちゃんが一生懸命お願いしてくれたのに、お返事できなかったんだ。だから意地悪されたと思ってるかも知れない」
「いずみだって、おへんじもらえなかったけど、いじわるなんておもわなかったよ」
「う…………」

 子供だと思っていい加減なことを言ってはいけませんね、自称サンタさん。

「でも、お兄ちゃんは意地悪だと思ってなくても、しーちゃんがそう思っちゃうことはあるでしょう?」
「しーちゃんはそんなわがままじゃないもん」
「う〜ん……」

 真剣に困ってますね。やれやれ…………

「お兄ちゃんにもわからないや…………」
「いじわるしなかったの?」
「うん」
「…………」

 いずみちゃんも、すっかり困ってしまいました。じゃあどうしてしーちゃんは、クリスマスが嫌いだなんて言ったんでしょう? …………はて、それじゃあ、いかにもこのお兄さんがサンタさんみたいですね、いけません、いけません。

「じゃあ、これからしーちゃんのところに行って、どうしたのか聞いてこようか?」

 いずみちゃんは、お願いしてもいいかどうか迷っているようです。

「大丈夫。しーちゃんのところにもちゃんと行くことになってたから」
「ほんと!?」
「ほんと、ほんと」

 そう言って、自称サンタがにっこり笑ったので、いずみちゃんはすっかり嬉しくなってしまいました。だって、いずみちゃんが一番心配してたのは、サンタさんが怒って、しーちゃんのところへ行かないことだったからです。

「じゃあ、しーちゃんのところに行ってくるからね」
「うん」

 そう言っていずみちゃんをベッドに座らせて…………自称サンタさんは、腕を一振りし………あら、消えてしまいました。

「すっごぉい……………………あ!」

 なにか大切なことを思い出したんでしょうか? いずみちゃんが、とっても困った顔をしています。

「いずみのぶんのぷれぜんと…………」

 あらら…………



 ちょっと気になりますね。あのお兄さんの後をつけてみましょう。…………いましたいました。空に浮いて、なにやら思案しています。

「なんか、予定外だなぁ…………今夜は諦めるしかないかな…………」

 そう呟くと、ふいっとまた消えちゃいました。おっとと。でも大丈夫。きっと、しーちゃんのお家に行ったんでしょうからね。…………ほらね、いました。

「さて…………一体なんて言えばいいかな……」

 困った顔でしーちゃんの家を見ると。おや? 玄関から赤い服を着たお爺さんが出てくるではありませんか。その後について、はしごを持って出てきたのは、しーちゃんのお母さんでしょうか?

「?」

 はしごを立てかけると…………お爺さんはそれを昇って、しーちゃんの部屋の窓を開け…………あらら、そのまま入っていってしまったじゃありませんか。

「なるほど…………」

 それを空から見ていた、あの自称サンタは、にっこり笑うと……

「余計なことはしない方がね……」

 そのままクスクス笑って消えてしまいました。ううん、どこへ行ったんでしょう?

 それはともかく、しーちゃんです。お部屋の方は…………しーちゃんとお爺さんは何かお話をしています。しーちゃんは吃驚したり……涙ぐんだり……うふふ。プレゼントをもらって、嬉しそうにしてますよ。よかったですね。

 やがてお爺さんは窓から出て…………はじごを降りると、待っていたお母さんに頭を下げています。お母さんの方も何度もおじぎをしています。そうして…………お爺さんは歩き始めました。どこへ行くんでしょうね?



 さて、いずみちゃんはどうしてるでしょう。戻って見てみましょうね。

 …………窓はちゃんと閉まってますね…………いずみちゃんは…………あれ、まだ起きて…………ふふ、こっくりこっくり。いきなりあんな得体の知れないお兄さんとお話したのに、さすがはいずみちゃん? でも……あ!……あ!……ちょっと、いずみちゃん。あ〜あ。床に転げ落ちちゃって…………でも寝てますね…………はは……

 おや、お母さんが部屋に入ってきて……いずみちゃんを見てそっと笑ってます。いずみちゃんを抱き上げて、ほっぺにチュッとキスをすると、お布団に寝かせてますね。いずみちゃんは、とっても気持ちよさそうにすやすやと眠っています。うふふ。可愛らしいですね。そしてお母さんは部屋を出て…………聞こえるのは、いずみちゃんの寝息だけ。おやすみなさい、いずみちゃん。

































 おやすみなさいと言いませんでしたか? 誰ですか? いずみちゃんのお部屋にいるのは?…………またあの自称サンタですね。

「いずみちゃん…………」
「すうすう…………」
「いずみちゃん?」
「すうすう…………」
「いずみちゃんってば」
「すうすう…………」

 せっかく気持ちよく眠っているいずみちゃんを起こそうとするだなんて、ひどいお兄さんですねぇ。それに負けずに眠っているいずみちゃんは偉い!…………かな?

 あ…………自称サンタの手があやしく光り始めて…………い、いずみちゃんの額にその気持ち悪い手をくっつけてますよ! いずみちゃん、大丈夫でしょうか?………………

「う…………うん…………」
「いずみちゃん? 起きた?」

 あ、あなたねえ、こんな夜中にちっちゃい子を起こして何をしようっていうんです!

「あ、サンタさん」

 だから、いずみちゃん、サンタかどうか…………

「しーちゃんは?」
「もう大丈夫」
「ほんと?」

 自称サンタがにっこり笑って頷くと、いずみちゃんの顔がぱあっと明るくなって、まるでひまわりが咲いたようです。

「じゃあ、いずみちゃん、行こうか」
「おでかけするの?」
「そう。しーちゃんも待ってるよ」

 ああ! とうとう本性を現しましたね! いけません! いけませんよ、いずみちゃん!

「じゃあ、おかあさまにいってくる」

 偉い! そうです。そうこなくっちゃ…………あ! あやしいお兄さんがいずみちゃんを抱きかかえてしまいました!

「お母さんには、内緒だよ」
「でも…………」

 え!?…………いなくなってしまいました…………た、大変です!



「きゃぁぁぁぁ! おうちがあんなにちいさい!」

 …………大喜びですね、いずみちゃん。知りませんよ。ホントに。

「しーちゃんとともみちゃんが待ってるから、大急ぎで行くよぉ!」
「うん!」

 本当に大喜びですね。でも、お空を猛スピードで飛んでるんですから、もう少し、変に思ってもいいんじゃないかと思うんですが…………

「それぇぇぇぇぇぇ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」

 おお! きらきらと軌跡を残して…………あっと言う間に見えなくなってしまいました。こちらもちょっとスピードアップしますか。

「ひゃっほう!!」
「きゃははははは!!」

 ううむ…………まるで流れ星ですね。

「あ、ながれぼし!」
「あれは飛行機だよ」
「ひこうき?」
「そう」

 そう言ってる間にもどんどんスピードをあげていき…………

「はい、着いたよ」

 急ブレーキをかけて、ふうわりと着陸!



「きれい…………」

 そこは…………一体どこなんでしょうか。赤や青のきらきらと光る星が休みなく降り注き…………

「いずみちゃ〜ん!」

 ふと向こうを見ると、足下の星を盛大に巻き上げながら、しーちゃんとともみちゃんが走ってきます。

「あぁ!!」

 いずみちゃんは、嬉しくて嬉しくて、もうぶんぶんと手を振ってます。

「しーちゃ〜ん! ともみちゃ〜ん!」

 いずみちゃんも駆け出しました。空から降ってくる星と、足下から舞い上がる星と、なんて言えばいいんでしょう。まるで天使が駆けているようです。

 そして3人が一緒になると……

 ぽぉん!!

 大きな音を立てて何かが空に向かって飛び出しました。3人ともずうっとそれを見上げていて、首がとれちゃうよ!っていうくらい見上げて……

 すってぇん!

 仰向けにのけぞってこけちゃいました。

「えへへ」
「うふふ」
「あはは」

 3人とも顔を見合わせて、照れくさそうに笑ってます。そこへ。

 りんご〜ん!

 綺麗なベルの音が響きます。慌てて上を向くと…………

「わあ!…………」

 色とりどりの花…………次から次へと咲いては散り、咲いては散り、そして、星くずがまるで雪のように3人の上に降り注いでくるのです。あんまり綺麗なんで、みんな、ぽかんと口を開けて見とれるばかりです。あちらこちらから、尾を引いて星が昇っていき、そしてそれがベルの音と共に花開く…………

 ふと、いずみちゃんは、二人の顔を見ました。星の流れを纏った二人は本当に綺麗で可愛くて…………気がつくと、3人が3人ともお互いに見とれています。

「うふ」
「うふふ」
「うふふふふ」

 いずみちゃんも、しーちゃんも、ともみちゃんも、口元を押さえて、クスクス笑っています。本当に…………やめときましょう。可愛らしいのはわかりきってますね。

「いずみちゃん! あっちへいってみよう!」

 しーちゃんが声をあげて指をさします。そこからは色とりどりの星が、噴水のようにふきあげてるんです。

「ともみちゃん、いこ!」

 3人は喚声をあげて走っていきます。あ! ともみちゃんが転んじゃいました。いずみちゃんとしーちゃんが駆け寄って、抱き起こしてます。うふふ。今度は手をつないで走っていきました。

「まあ、仕方がないか…………」

 あの自称サンタがそれを見ていて、ぽつりと呟きました。

「あれは来年にするしかないな」

 何をするつもりだったんでしょう? でも…………にこにこ笑ってますから、まあいいですか。



 さてさて、ここへ来てから随分になるようなんですが……そろそろ帰らなくてもいいんでしょうかね。

 でも3人はそんなこと気にもせずに、向かい合って座りながら、何かしてます。どうやら髪飾りを作ってるようですけど……一体どうやってるんでしょう?

「はい、いずみちゃん」
「ありがとう、しーちゃん。はい、これ」
「ありがと」
「ねえねえ、いずみちゃん、これどう?」
「わあ、かわいいよ!」

 きゃっきゃ騒ぎながらお互いの髪飾りの品定めです。女の子ですね。

「さて、お嬢さん方」

 おや、またしても自称サンタです。

「そろそろ帰る時間ですよ」
「えー! もう!?」
「もうすこしだけ、ここにいるぅ」

 これこれ。

「だめだめ。もうすぐ朝になるからね」

 …………そういうあなたは、そんな時間まで子供を連れ出して何をしてるんです?

「でもぉ…………」
「ねえ、ともみちゃん?」
「う、うん…………」

 穏やかに笑いながら、それでも自称サンタは、首を振っています。

「だ〜め」
「う〜ん、つまんないの」
「ちぇー」
「…………」

 自称サンタは3人の頭を交互に撫でると、

「最後にプレゼント」
「え! なぁに?」
「なになに?」
「どんなの?」

 …………3人とも、はしたないですよ。

「はい」

 ゆっくりと手が動き、それにあわせて虹が生まれていきます。3人とも、うっとりと見とれています。手の動きにあわせて複雑なパターンがその虹に織り込まれていき、そして…………ふわり…………3本の光の帯となってしばらく宙を漂った後、3人の髪に潜り込んでいきました。

「あ!…………」
「わ!…………」
「きゃ…………」

 気がつくと、真珠色の綺麗なリボンが3人の頭にのっかっています。

「これで魔法はおしまい」

 そう言うと、まわりの星が一斉にはじけて!…………な、何事でしょう! い、いずみちゃんは、しーちゃんは、ともみちゃんは大丈夫でしょうか!?



 いつの間にか…………朝です。いずみちゃんは…………よかった。ちゃんとお休みしてます。気持ちよさそうに、すやすやと眠っています。あれ? 枕元には小さな箱が置かれています…………誰なんでしょう。例の、自称サンタは、プレゼントを持ってこなかったようなんですが…………

 ともみちゃんも、ぐっすり眠っています。枕元には…………やっぱり小さな箱が置いてあります。いずみちゃんと同じ箱ですね。

 しーちゃんのお部屋をのぞいてみると…………しーちゃんもすやすやと夢の中のようです。やっぱり小さい箱が置いてあります。ああ! そうです。あのお爺さんがプレゼントだと言ってしーちゃんに渡した箱です。でも、ともみちゃんやいずみちゃんのところにも同じ箱があるということは…………あのお爺さんは、二人のところにも行ったんでしょうか。

 仲良しの3人のところにプレゼントを届けるだなんて…………あのお爺さんは誰なんでしょうね。

 いえ、それ以前に、あの自称サンタは何者だったんでしょう。そして…………

 いずみちゃんたち3人が過ごした空の上のあそこは…………夢だったんでしょうか?



『意外とせっかちなのね』
「なにが…………かな?」
『会いに行ったんでしょ?』
「…………のぞき見とは趣味が悪いよ」
『ま、レディの部屋にこっそり忍び込むのはどうなの?』
「レディって…………」
『違うって言うの? ちっちゃくても立派な……』
「わかった。わかりました。わかりましたよ…………どうも分が悪いな」
『ふふ…………後10年もしたら会えるのに』
「いや、そうじゃなくて…………」
『往生際が悪いわよ』
「あのねえ…………今までもやってたことじゃないの」
『あら、今までは『プラン』の設定を調整するだけですませてたじゃない。あなたが集めて回るのは、ちょっと違うような気がするんだけど?』
「いや、だけどね」
『それに…………結局、2人だけじゃないの。後の3人はどうしたの?』
「う…………」
『第一、しーちゃんだっけ? あの子は…………』
「わかったよ、もぉ。かなわないなぁ」
『認める? いずみちゃんの顔を見に行ったんだって?』
「やれやれ」
『いずみちゃんが心配してるから、5人を集めるのを諦めて、あんなことしたのよね』
「はいはい、そうですよ」
『ふふ…………しょうがない人ね』
「なんとでも言って、もう…………」
『くすくす…………』





Mery Christmas, Children!……





戻る