An Episode in The Known Worlds' Saga ---《 The Soldier 》 外伝


光の真名
ひかりのまな

第4章 『目覚めぬ者』

… B-Part …



 『城』……エミュイエルが「プリンセス」のために用意した空間。もっとも、『城』と言っても、TERA-527の住民にとっては、想像もつかない機器で埋められている、超未来建造物である。だが、その主はまだ姿を見せておらず、中はひっそりとしていた。その一室に、エミュイエルと可憐がいた。

「大丈夫かい?」
「ええ。もうすっかり。あなたが今まで看ててくれたんでしょ? ありがとう」
「なに、『彼』からも頼まれてたからね。でも、最初はどうなることかと思ったよ」
「随分、ひどかったでしょうね」
「はは。意識はあるものの、言うことがころころ変わるからね。まあでも、すっかり落ち着いたようで、安心したよ」
「昨日の記憶がないんだけど、良ければ、何があったか教えてもらえる?」
「いいよ」

 REMは、可憐が屋敷で《闇》に襲われたこと、救援が間に合わず、緊急防御プロセスが発動したこと。そのため、人格崩壊の危機にさらされたことを話した。

「だから、目が覚めた時は、様々な人格の記憶が入り乱れた状態だったんだよ。それにしても……」

 REMは、可憐を穏やかに見つめた。

「さすがは、ガーディアン・リーダーだね。大したアストラルパワーだ。普通なら、あの状態から回復することはないんだけどね」
「お誉めいただいてありがとう」

 可憐はにっこりと笑いかえした。

「それにしても、私が『覚醒』したということは、他の皆はもう活動を始めてるってことね」
「え、どうしてそれを?」
「他の皆は、戦いの最中に封印せざるを得なかったんだけど……私だけは最後まで残ったから……事情を聞いてたの」
「そうだったのか……」
「ねえ、ハノイユやエマイユは元気かしら?」
「あ? ああ。元気だよ。頼もしいくらいさ」
「良かったわ。ねえ、ルナイユは、もう彼と……」
「いや……」
「そう……あんな最後だったのに……まだ出会ってもいないの?」
「どうだろう……俺はそこまで知らないから」
「そうね。そうそう、サライユは?」
「サライユ?」
「そうよ。あの子の明るさとバイタリティにどれだけ救われたか。もちろん、元気にしてるんでしょ?」
「いや、それが……」
「何? 何かあったの? まさか、《闇》にやられたわけじゃあ!……」
「そうじゃない……実は、まだ『覚醒』してないんだ……」
「何ですって?!」
「本当だよ」
「『器』はわかってるんでしょ!?」
「いや、それも……詳しいことは『彼』に聞いてくれないか。俺もまだ聞かされてないんだよ」
「そう……」

 二人はしばらく口をつぐんだ。沈黙が流れる。二人が同時に口を開こうとした時、

『エミュイエル! いるか!?』
『ここだ!』
『ちょっと待て!……わかった。京子ちゃんを連れていく!』
『こ、ここにか!?』
『他に場所がない! 横になれる場所を空けておいてくれ!』
『お、おい!』

 テレパシーによる接触が途絶えた。と思った瞬間、京子を脇に抱えた淳が、ジョウントアウトしてきた。

「うまくいったのか!?」
「半分成功で、半分失敗だ」
「どういう……」
「アーリマンにしてやられた。精神崩壊を起こしかけてる。パラサイコフリーズをかけて、連れてきた」
「な!……」
「とにかく、横にするところはないか?」
「あ、ああ。向こうにソファがある。あそこで」
「私が左側の肩を持つわ」
「可憐ちゃん?」
「お久しぶりね」
「……良かった。君が助かってくれてよかったよ」
「それより今はこの子を」
「ああ。エミュイエル、ちょっとそっちを持ってくれ」
「わかった」

 3人がかりで、そっと京子をソファに横たえる。淳がため息を吐いて、REMたちの方に向き直った。

「今からサルベージを行う。凍結を解除した瞬間に彼女の心に入っていって、崩壊を食い止める」
「俺にやらせてくれ」
「君が彼女を愛してるのは、わかる。だが、これは……」
「いいから、やらせてくれ!」
「REM……」
「京子ちゃんを『アーリマン』のもとから助けだすのは任せたんだ! これから先は、俺にやらせてくれ!」

 REMの真摯な目が淳を見据える。淳は困惑したように彼を見つめながら、それでも反論した。

「いいか、君の使命は「アーリマン」や《闇》の使徒と戦うことだ。サルベージは本当に危険なんだぞ。下手をすれば、アストラルボディに障害が出る。そうなったら」
「わかってる!! そんなことはわかってるよ!! それでもやらせてくれと言ってるんだ!!!」
「………」

 淳と可憐は、思わず顔を見合わせた。尋常ならざるREMの様子……それだけ愛情が深いということだ……可憐が口を挟んだ。

「ねえ、エミュイエルではできないことなの?」
「いや……」
「なら、やらせてあげて」
「可憐ちゃん……」
「お願い。成就しない愛を見るのは、もう嫌なの」

 成就しない愛……そうだ。余りに多すぎた……淳は俯くと、諦めたように言った。

「わかった。君に任せるよ」
「ありがとう」
「だが、条件がある」
「何だ?」
「アストラルボディに異常を感じたら、すぐに中止して戻ってくること」
「……わかった」
「それと、何かあった時のために、ハノイユたちを呼び寄せる」
「わかった」

 REMは、淳に頷いてみせると、京子の傍らにかがみこんだ。

「必ず助けるからな。待っててくれよ、京子ちゃん……」

 呟きとともに、京子の額に自分の額を密着させると、淳に言った。

「解凍してくれ」



 《闇》……アーリマンの息遣いが静かに聞こえる。

「奴にあんな『力』があったとはな……さすがにあなどれん奴だ……」

 静かな忍び笑いがこだまする。深い闇に包まれた世界。京子が連れ去られたのは、予想外のことだったが……計画を修正せねばならんな……まあ、いい。その代わり、奴には地獄を見てもらう……くくく……

「ダハーカ……アエーシュマ……」

 アーリマンの呼び掛けに応じて、西御寺と洋子が姿を現す。

「お呼びで」
「計画を早める。奴らをおびき出せ」
「しかし、『奴』がまたしても《光》の側についたのは明白。急いては元も子もなくします。ここは慎重に進めた方がよろしいのでは?」
「構わん。要は、ガーディアンと光の使徒を足留めできれば、それで良いのだ。『奴』には、トラップを仕掛けておいたからな」
「『ジェハ』と『ヤートゥ』は?」
「マナイユにやられた傷が回復しておらん。全く、油断しおって……まあ、そういうことだ。今回は、お前たちでやってくれ」
「わかりました」
「ふん。わざわざ二人ででばる必要はないね」

 洋子の冷ややかな声がアーリマンに向けられる。

「『奴』に脅されて、のこのこ帰ってくる奴なんか、足手まといだぜ」
「な、なに!」

 西御寺が洋子を睨みつける。だが、洋子はそれに一瞥をくれただけで、アーリマンに言い放った。

「私一人で十分さ。『奴』さえ押さえとけるんなら、あんな奴ら、大したことはないしな。ダハーカには昼寝でもしててもらおうか」
「く!……」
「わかった。よかろう。一人で行け」
「アーリマン!」
「まあ、よいではないか。では行け、アエーシュマ」

 洋子の姿が音もなく消える。西御寺は、アーリマンに声を荒げて言い募った。

「なぜあんな勝手を許すのです! 私は、私は腰抜けなどではない!」
「わかっておる。まあ、ここは黙って吉報を待っておれ。お前にもそのうち、出番があるわ」
「しかし!……」
「後は、プリンセスが出てくれば……計画の仕上げに入れる。お前はその時に備えておけ。よいな」
「……は……」
「では下がってよい」

 西御寺の姿も消え、再び闇の中に、アーリマン一人となった。

「長かったが……やっとあの計画を実行に移せる……楽しみだな……くくくく……」

 アーリマンの笑い声が、静かに、闇にこだました。




 桜の花が散ってる……あれから、あの『事件』から誰も訪ねてこない……あんなに頻繁に顔を見せていたREMも、姿を見せない。

「忙しいのかしら……」

 寂しげに呟くと、桜子は手元に目をやった。光が手の中に生まれ、ゆっくりと宙に舞い上がっていく。一つ、また一つ、光は桜子の周りを巡りながら、漂い続ける。

「ふふ……」

 あの予感は、ますます強くなっていた。『その時』が間近に迫っている。光が桜子の体を取り囲み始める。手の中からは、まだまだ光が生まれている。

「なぁに? あなたたちは、何を知らせに来たの?」

 手の中で光が微かに震え、おずおずと転がり始める。

「そう……そうなの」

 桜子は、ゆっくりと微笑みを顔に浮かべた。光が少しずつ集まり、桜子の体を覆い隠していく。やがて桜子の体は、すっかり光に包まれてしまった。

「そうね……時が満ちたのね……何だか長かったわ……」

 柔らかく、暖かい光が桜子の体に吸い込まれ始める。桜子の唇から、微かに吐息が漏れる。

「なに? 思い出すの? そう……あなただったのね。私の中にいたのは……」

 桜子を包んだ光が膨らみ、球状に変化していく。脈を打つように律動を開始したそれは、桜子と何かを話しているようだった。

「こんにちは……あなたと一つになるのね……いいえ、怖くなんかないわ。わかってたから。ううん……私はいつでもいいのよ」

 光がひときわ大きく脈動した後、桜子に向かって収縮を始める。

「ああ……思い出してきたわ……そうね。本当に長かった……」

 そして光が弾け、桜子の姿が再び現れた。穏やかな瞳には、それまでの儚げな様子は微塵も見られず、強い決意を秘めた意思の光が宿っていた。

「時が満ちたわ……『ソルジャー』……あなたは、まだ悲しい目をしてるのかしら」



 目の前に通された龍之介を見て、ミサはショックを受けていた。似ている……あの人に似ている……こんな、こんなことって……

「先輩、すみません。今コーヒーでも入れますから」
「あ、いいよ。構わないで。こずえちゃん」
「いえ、すぐですから」

 コズエが、パタパタと台所に駆けていく。龍之介が来ると、まるでまとわりつくかのようにコズエはあれこれと世話を焼いている。

「あらあら……これはひょっとして……」
「何ですか?」
「いえ、何でもないの。あ、自己紹介がまだだったわね。私は、田中 美沙」
「神藏 龍之介です」
「ごめんなさいね、わざわざ来てもらって」
「いいんですよ。家にいても滅入るばかりでしたから……それより、何でしょうか?」
「ちょっと待ってね。彼女がお茶を入れてくれるから、それからゆっくりと話をすることにしましょう」
「はあ……」

 それにしても、そっくりだわ……私の目の前で、事故に遭ったあの人に……忘れたつもりだったのに、まだふっ切れてなかったのね……

 DQSE-666系次元世界。ノウン・ワールドが正式コンタクトを取る前に、事前調査のためにあの人と派遣されたんだった。いつも明るく笑ってた。いつも前向きで、一緒にいると、とても楽しい人だった。そういえば、どうしようもない女たらしだと言われてたわね。この子と同じ。実際のあの人は、とても繊細で優しい心の持ち主だったけど、この子もそうなのかしら。

 コズエはまだ台所から戻ってこない。ミサは、龍之介をじっと見つめた。こうしてると、本当にあの人が目の前にいるみたい。あの事故の朝、何だか嫌な予感がした。いつの間にか一緒に暮らすようになって、調査もほぼ終わりっていう日の朝。ミサの体が微かに震える。止めるんだった。1日くらいは休もうって言ってたのに、やり残したことを思い出したからって。無理にでも休もうって言うんだった。そうすれば、中央官庁の方へ出かけることもなかったし、そうしていれば、暴走したリニア・カーに出くわすこともなかった……その巻き添えであの人は……

 あれからの私は、まるで抜け殻……あの人がいなくなった後、心にあいた穴を埋められなくて、惰性で生きてるだけ……もうおしまいにしたい……この任務に志願したのもそのため……

「あの、美沙さん?」
「あ、ごめんなさい。ちょっとぼんやりしちゃって」
「大丈夫ですか? 顔色があまり良くないようですけど」
「大丈夫、大丈夫」

 優しいのね……美沙は、龍之介に微笑みかけた。やっぱり似てるわ……

「すみません。お待たせしましたぁ」

 コズエが、コーヒーを運んできた。

「さて。こずえちゃんも座ってね」
「はい」

 それぞれにコーヒーカップを渡したコズエは、龍之介の隣に腰掛けた。

「龍之介君」
「はい」
「これから聞くことは、ともて大切な事なの。だから、何を聞いても、怒らずに、答えて欲しいの」
「はあ。でも」
「いいわね?」
「ええ、まあ」

 ミサのセンサーも先程からかなりの反応を示している。これは間違いないわ。

「ねえ、あなた、最近変な夢を見ない?」
「夢?」
「そう。とらえどころのない、それでいて、どこか不安な夢」
「それは……」

 龍之介が言いよどんだ。




 のどかな時間は、あっけなく終わった。淳からのテレパシーで、ことのあらましを聞かされた唯たち3人は、『城』の廊下を歩いていた。マナイユが『覚醒』したのは、朗報だった。だが、サライユが……

 友美は、サライユの身を案じていた。精神崩壊……一度見た事がある。悲惨だった。植物人間の方がまだましね……

 唯は、龍之介のことがどうしても頭から離れなかった。マナイユのことも、サライユのこともどこか遠くで起きた出来事のように思えて仕方なかった。

 いずみは、複雑な心境だった。またあの人に会える。そう思っただけで、胸がどきどきしてきた。だが、サライユのことは……

 3人は、扉を開け、その部屋に入った。



 表層は、荒れ果てている……何のイメージも伝わってこない。京子の意識に入り込んだREMは、その異常さにショックを受けていた。勢い込んで来たものの、これはかなり難物だ……さらに精神の奥へ進む。荒れ果てたイメージが続く。まさか、遅すぎたなんてことは……さらに進む。既に表層は通り過ぎ、深層意識に近くなってきている。少しずつイメージの残像が見えてくる。REMがそれに目を向けようとした時、京子の精神エコーが『聞こえた』。

『誰?……あなたは誰?……』
『京子ちゃん? 京子ちゃんか? 俺だ。REMだ。迎えに来たよ』
『いや……来ないで……私は……私は……』

 京子の精神エコーが不意に途切れる。迂闊だったか……京子ちゃんの精神は、さらに深遠へと後退してしまった。残されたわずかなイメージ。先負学園での一風景。空手の稽古。テニスの練習。いずれも京子ちゃんの日常だ。その中にひときわ鮮明に残っている《闇》のイメージ……「アーリマン」だ……REMのアストラルボディが、わずかに揺れる。あの野郎!……彼は、京子の精神エコーを追って、さらに深層へ、識閾下の意識の海へ向かった。



「死んでる……のか?」

 いずみが、京子の顔を見て、淳に問う。京子の顔色は、蒼白となっており、息をしているかどうかも定かではない。

「いや、死んではいない。だが、精神崩壊がどんどん進んでいる……フリーズが遅すぎたんだ」

 淳に寄り添うように立ちながら、いずみは京子を見つめた。そっと淳の袖を掴む。可憐と友美は、REMの邪魔にならないように、部屋の隅に立ち、小声で話をしていた。

「明らかに今度の戦いは、今までの戦いと違うわ」
「違う?」
「二人とも覚えてるでしょ。コンピュータ操作をしていた時に見たメッセージ」
「ええ」
「あれは、私たちを『覚醒』準備に入らせるための始動キーとして、先輩が設定したものらしいんだけど、その後の『暗闇』の件については、そんな仕掛けをしてなかったらしいのよ」
「そんな!……じゃあ、あれは誰が何のために?」
「それより、先輩の仕掛けに介入できる『力』よ。そっちの方が問題だわ。アーリマンにもできることじゃないし、プリンセスだって同じよ」
「別の何か?」
「その可能性が一番高いわ」
「そんな! 《光》と《闇》以外に、そんなことのできる存在があるはずはないわ」
「でも、実際、先輩もそれを聞いて驚いてたし、誓ってそんな仕掛けはしなかったって言ってたのよ」
「……まさか……」
「《光》と《闇》以外の、何らかの意思が、存在すると考えざるを得ないわね。それももっと高次の存在の」

 友美には、可憐の言葉が信じられなかった。《光》でも《闇》でもないもの……そんなものが、この宇宙に存在してたなんて……

「唯ちゃんは、どう思う?」
「………」

 友美が唯を振り返って声をかけたが、唯は、何か物思いにふけっているようで、返事をしない。

「唯ちゃん?」
「え? あ、ごめんなさい」
「また考えてたのね」
「ごめん……」

 友美と唯の会話を聞いた可憐が、穏やかに割り込んだ。

「仕方ないわ……あんなことがあったんですもの。今度は、あれを繰り返さないように今から手を打つのよ」
「うん……」

 唯は、力なく可憐に答えた。



 私はここにいる。ここはどこ? いいえ……どこでもいいわ。私は何も見えないもの。私は何も聞こえないもの。私? 私は誰? 私は私。でも、私じゃない……私が愛したものは、壊れてしまった。世界……もうどこにもない……

『京子ちゃん……』

 誰かが呼んでる。でも私は返事をしない。私は京子じゃない…………私は何者でもない…………私の中に京子と呼ばれて答えようとする何かがいる。でも私はそれを押さえつけるの。だって、もう私はどこにもいないんだもの…………

『俺だ……REMだ……』

 REM? 私の中の京子が何かを思い出そうとする。駄目よ。思い出しちゃ駄目。また勝手に体が動きはじめて、殺しあいを始めちゃうわ。だから駄目よ。私のことじゃないんだから。いいえ、私なんていないの…………だから京子なんて知らないの……REM君なんて知らないの…………

 ここにいれば、私は何もしなくてすむ。私のことを忘れていられる。ほら、もう随分忘れた…………

 私? 私って何? もうどうでもいいわ…………

『京子ちゃん! 帰ってきてくれぇ!!!』



 REMの精神波が、爆発する。随分深くまで降りてきてしまった。京子ちゃんの心の深遠。様々なイメージが現れては消えていく。両親の姿。姉の姿。

「舞さんって言ってたな……」

 ひときわ姉のイメージが多いのは、それだけ姉のことを真剣に想っているからだ。REMの表情がふとゆるむ。京子ちゃんらしい……微かに現れて消えていった残像は、卓朗先輩だ。彼女の初恋の人……ふと、繰り返し現れるイメージのひとつに、どこかで見た姿を見つけた。あれは……また現れる。俺だ……暖かいイメージ。REMは、胸が締め付けられる思いがした。

 もはや、サルベージの限界を越える深みにまで来ていたREMの精神だが、ちらっとまだ現れては消えるイメージ群を振り返ると、さらに京子の精神の奥へ進むため、ダイブした。



 光……嫌い。闇……嫌い。なぜ? わからない。みんな嫌い…………ここは明るくも暗くもなくて気持ちいい…………もう誰も私を連れ出しに来ない…………私? 私って誰? 何だかよくわからない……舞ちゃん?……それ誰? 知らない……卓朗先輩?……知らない……何も知らない……先負学園……どうしてこんなことが浮かんでくるんだろう……私にはもう関係ない……私? そんなものはいない……





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