『いつか見た風景』

               written by 古酒
 空を見ている私の瞳に 一筋の飛行機雲が映っている
 空は果てなき水色に染められ 真白な雲がただ流れている

 ただ一人 路を歩く
 いつまでも 路を歩く

 貴方の心を見たときに 私の心が動き出す
 たったひとつの小さな波が 私の全てを支配する
 夢を見ていた 貴方の夢よ 貴方と二人 路を行きたい

 私の心よ空を行け 真白な路を歩いて行け
 私の心よ空を飛べ 貴方の下へ飛んで行け


 路を歩く私のそばで 貴方が優しく微笑んでいる
 路は緩やかに空へ向かい その頂きは空へと繋がる

 二人きりで路を歩く
 貴方とともに路を歩く

 貴方の心に触れるとき 私の心は怯えだす
 貴方が何かを言うたびに 私の心は震えてる
 偽りの言葉と 真実の心 鏡に映りし もう一人の私

 私の心よ言葉を越えろ 本当の気持ちを彼に伝えて
 二人の心はすれ違う 路の頂きには入道雲


 私が見ている泡沫の夢は いつ醒めるとも知れないひとときの夢
 でも 私は貴方を見ているわ 貴方が私を見ていなくとも
 いつか時が来るまで そうその時が


 空は赤く夕日に染められ 一陣の風が私の頬をなでる
 二人の歩く一筋の路は いつしか二つに分かれていた

 二人は歩く それぞれの路を
 私はひとりで歩いていく


 赤い夕日を見つめていると 目の前の風景が滲んできた
 河原を歩く 風の吹く河原を そして 目の前に差し出される蒼いハンカチ

 そう君はいつも近くにいたね 遠くにいると思っていた君が近く感じる

 ただ一人 路を歩く
 君の行く路のそばを歩く
 いつか見た大切な夢を胸に抱いて


 貴方の見た大切な風景はなんですか そっと心を開いてみて下さい


                                  了

戻る